歴史
吉海直人(名誉教授)
令和8年に同志社女子大学が創立150周年を迎えるにあたって、本学の始まりをあらためて考える中で、創立記念日についてあれこれ調べてみた。そんな中で令和7年の創立記念日がやってきた。さて10月24日にはどんな創立記念行事があるのかと注目していたところ、なんと当日は平常通り授業が行われており、記念式典などは一切行われていないではないか。かろうじて宗教部のチャペルアワーだけが、創立記念礼拝と銘打って行われていたにすぎなかった。
試みに同志社女子大学の学生に、本校の創立記念日はいつかと尋ねたところ、ほぼすべての学生が11月29日と答えた。それは同志社大学の創立記念日ではないのかと反論しようと思ったが、何のことはない本学の学年歴の授業日程関係に、「11月29日 同志社創立記念日(全日休講)」と出ているのだから、学生がそう思っても不思議はなかったのだ。この「同志社」を同志社女子大学のことと読み取ってもおかしくあるまい。
もちろん行事日程関係には、「10月24日 同志社女子大学創立記念日」とあるが、だからといって授業が休講になるわけでもないし、特別な行事が催されるわけでもないので、学生に意識されることはなさそうだ。そもそも創立記念日というものは、学校をあげて祝うものではないのだろうか。それが普通の授業日となっているのだから、その日が創立記念日だと意識されなくても当然である。
これはどういうことなのだろうかと思いをめぐらした結果、どうやら本学の特殊事情によるという結論に至った。というのは、本学は単独の女子大学ではなく、学校法人同志社の中の一つの学校だからである。その中心はもちろん同志社大学である(カレッジ・ソングも共有している)。だから創立記念行事は各校が独自(個別)に行うのではなく、学校法人同志社として統一して行われていたのである。必然的に同志社英学校が創立した11月29日が同志社の創立記念日なのだ。といっても、その日に女子大学で独自に行われるイベントはなさそうである。
学校法人同志社として統一して創立記念行事を行うのであれば、女子大学の創立記念日など二の次である。もともと女学校は女子塾を経て同志社分校女紅場として始まったのだから、「分校」の創立記念日など本体に比べれば、同志社の歴史においては些細なことである。11月29日を創立記念日として共有した方が、全体の統一が取れていいくらいだ。現状を直視すれば、本学の創立記念日は同志社をあげて11月29日に催される方がよさそうである。10月24日という本学独自の創立記念日は、単独の女子大学としては意味があるが、学校法人同志社という組織の中では埋没しても仕方がないというか、独自性をアピールできる程の重要性は認められそうもない。
もともと長い同志社の歴史の中で、英学校と女学校の歴史は一緒くたに語られてきた。むしろ両校の歴史が異なるという考えは比較的新しいようである。あるいは新制の女子大学が設立されて以降の意識かもしれない。そのことは本学名誉教授の坂本清音先生が「140年を語りつぐ」の中の「同志社女子部の創立の日(1876年10月24日)を憶えて」で、『俗な比喩で申し訳ないのですが、11月29日は、同志社家の長男「英学校くん」が生まれた日であって、長女の「女学校ちゃん」はまだ生まれていません。それなのに、お兄ちゃんの誕生日に一緒にお祝いをしたらそれでいいと、私の誕生日が無視されるとしたら、妹は憤慨するのは当然ではないでしょうか。私のバースデーケーキは、私の誕生日に食べたいのというのは、ごく普通の妹の言い分です。ただそれが生まれて120年近く経って、初めて自分のルーツを知り、やっと自己主張を始めたという、かなり遅すぎる「女学校ちゃん」の言い分であることは気になります。』と述べておられる。まさにその通りだ。ただし「女子部」といういい方は、同志社大学が共学になったことで、もはや今の在学生には通じないかもしれない。いずれにしても坂本先生の御意見に耳を傾け、10月24日をもっと記念日として大切にすべきであろう。