小説家
鳥越 碧さん
学芸学部英文学科
1967年卒業

Profile
1944年、福岡県北九州市生まれ。商社秘書勤務を経て、1990年、尾形光琳の生涯を描いた『雁金屋草紙』で第1回時代小説大賞を受賞。ほかの作品に『一葉』『漱石の妻』『萌がさね』『想ひ草』『兄いもうと 子規庵日記』『花筏』『波枕』『めぐり逢い 新島八重回想記』『わが夫 啄木』『白秋秘唱』などがある。
創立150周年に寄せて
歳を重ねるに従い桜や紅葉は言うに及ばず、自然や人間社会の諸々に愛しさが増すのは限られる老坂を意識するからであろうか。私は時代小説を書いているのだが、資料の中で、思いがけなく母校の名を見て嬉しくなる事が多い。例えば、貧窮の与謝野寛、晶子夫婦を長年援助した大阪商人小林政治の娘迪子は同志社女専に学び父の許で温かく与謝野家を見守り、後に長男光と結婚した。
又、失恋した島崎藤村が関西へ逃避した折、滋賀の素封家の娘で物心両面で支えた広瀬恒子も同志社女専の卒業生である。こうした先輩達の温かい心意気に励まされる思いがする。
温かいといえば、卒業後、何十年も励まして下さった亡き髙山修先生、今なお、ご専門の戯曲の観点から、台詞の部分などに細かいアドバイスを送って下さる石田章先生の温かいご指導には感謝の言葉もない。こうした温もりこそが、同志社女子大の心髄に思われ、母校への愛しさをより深く感じる昨今である。